残業時間の上限についての議論が進んでいます。
電通における社員の長時間労働の問題に端を発していることから、主に労働者の保護の観点から、長時間労働をどう抑制するかが論じられています。
もちろん、望まない、健康に害のある長時間労働を、資本家が労働者に押し付けるのは抑制されるべきでしょう。
しかし、労働時間の問題は、単なる労使間の問題とだけ捉えるべきではありません。
労働時間は、サービスの受け手としての私たちにも影響が生じるからです。
メリットとしては、長時間労働はサービス品質を落とすため、これを回避できる、という点を指摘できます。
格安のバス事業者がドライバーに長時間の運転をさせており、結果として運転中に疲労から意識を失い事故を起こした、という事件は忘れてはならない教訓です。
命に関わるから、安全に関わるから、という問題ではありません。スーパーのレジ打ちのアルバイトであっても、打ち間違えて変更に手間取るのであれば、それはサービス品質が落ちていることになります。そして、それが長時間労働によっても引き起こされるのであれば、長時間労働を抑制することでサービス品質が上がる、ということです。
もちろん、デメリットもあります。
長時間労働を抑制することでサービス品質が下がる、ということです。
こちらは最近話題のクロネコヤマトがいい実例なのですが、長時間労働させられないから人出不足でサービスの一部(受取時間の指定等)をやめます、あるいは値上げします、ということが起こります。
人出不足は医療の世界でも同じで、お医者さんが全員労働時間の上限を超えているため、今月、こちらの病院ではもう手術ができません、病状が悪化しても対応できません、みたいなことに繋がると言うことです。
さて、本題ですが、森元学園を巡る政治的なゴタゴタの中、籠池理事長の証人喚問が行われました。
ざっくりとした感想としては、(1)真相解明に向かったとは思われない、(2)そのため自民党にとっては失敗だった、野党にとっては時間の無駄だった(3)結論として、国会ではもっと他にやるべきことがあるのでは、の3点です。
(1)については、特定の証言を取り上げて評価できるのかもしれませんが、疑いが強まった/弱まった程度の話のように思います。
(2)ですが、自民党としては証言の中で明確に疑惑を晴らすことができなかったことが失敗です。
なんのために証人喚問を行ったのか、も分かりませんし、危機管理能力がないと言う評価にもつながってしまっています。
一方で野党にとっても、真相を解明するような質問ができないことを明らかにしただけだったように思います。
森元学園問題はそもそも籠池氏側の動きがおかしく、行政としては法制度の枠内で便宜を図って対応している案件だと私は思います。
えこひいきがされていたり、それが政治家がらみだったとしても、倫理的あるいは心情的な問題になるだけ。
国会でする話なの?と。
本来、事実関係が明らかになっていることの評価、あるいは対応策の議論をすべきなのが国会なのでしょう。
疑惑を追及する、のはマスコミですとか、捜査機関に任せておけばよいのでは。
と、思うのですが。
残念なことに、世間の注目が集まることと、真相解明が進むことがセットになっていることがしばしばあります。
豊洲市場の問題などもそうですし、オリンピックの競技場建設の話もそうです。
これは、注目を集めることで、より多くの人が資料に接するようになる結果、真相に近づく面もあるでしょうし、また当事者の中に注目され鵜と黙っていられない人がいるってこともあります。
なので、仮に今回の森元学園について、何も出てこなかったとしても、だから初めから騒がなければよかった、とは言い難いです。
これが残念だと思うのは、疑惑をもたれ注目されることが、関係者に多大な迷惑をかけることになるからです。
結果的に問題が是正されたから全てが許されるわけではなく、報道/取材の被害にもっと目を向ける必要があるのでしょう。
ちょっと話がそれましたが、今回の疑惑の中心にいらっしゃる籠池理事長。
昨日は国会で証言された後、記者会見を開かれたと言うことで、年齢も考慮するとなんと元気な人なのだろう、という感想もあります。
しかし、私は、籠池さんって昨日は、あるいはここ1か月は何時間働いたんだろう、が気になっています。
何を持って働いた、というのか厳密に定義するつもりはありませんが、いろいろなことをこなされ、嵐のような毎日であることは想像に難くありません。
少なくとも、休日に家族と団らんとか、一人で数時間映画を見てぼーっとしてる、なんて時間がないことは間違いないでしょう。
誰が頼んだのでもなく当人が勝手にやっているのだ、と理屈をつけたところで、働きすぎであることは疑いないように私には思えます。
そして、働きすぎは、当人のためにならないだけではなく、社会にとっても良いことではない、というのは冒頭でご説明した通りです。
具体的な事例に即して言えば、証言の正確性に疑義が生じ、ひいては真実究明への取組が遅れる、あるいは阻害される可能性がある、ということです。
何で、マスコミ各社としては、労働時間をきっちり監視するとともに、働きすぎであると判断された場合には、各社で協定を作り、当事者を一定期間、そっとしておくような仕組みを構築されてはどうか、と思います。
もっと簡単に言うと、おかしなことを言っているかも、と思うのだったら、まず休ませて、落ち着かせてから話を聞くべきじゃないでしょうか。