学歴、経歴、資格をひけらかす人がいる。
お行儀が良いとはいえないものの、微笑ましいなあと私は思う。
凄いですねと持ち上げてあげるか、聞き流すのか、張り合ってみるのか、はその相手との関係によるのだろう。
自分のことを自分で言い出す分には、別に好きにしてくれればいいのだが、世の中には、他人の情報を話したがる人が多い。
しかも、あなたのことをあなたの代わりに褒めてあげているんだから感謝されてもいい、ばりの善意である。
これが出身地であるとか、子供の数であるとか、あるいは趣味であるとか、そんなことであればビジネス上は問題にはならない。
困るのは、経歴と資格の情報である。
経歴や相手に伝えることで、一定の分野については、知識があることを示すことができる。
知識を示すのは、相手の業界についての知見があることでより関係を円滑にできることが期待される。
一方で、業界についての知識を持っていることが相手を警戒させたり、対抗心を燃やされたりする可能性もある。
そのため、言うべきか、言わざるべきか、言うとしても何時、どのタイミングでいうべきか、は慎重に判断されるべきである。
しかし、他人の経歴を披露する場合に、そのようなことが考慮されることはまずない。
資格についても同様である。
資格を盾にすることで、より深いヒアリングができたり、アドバイスに実効性を持たせたりすることができる。
身もふたもない言い方をすれば、相手を支配することができる。
しかし、経歴について述べたところと同様、副作用も少なくない。
起こりがちなのは、専門家としての意見を求められることで、本来であれば有償であるはずのサービスを無償で行う羽目になることが多い。
上司と取引先、見込み先を往訪する際、何を言うべきか、は事前に打ち合わせておくことで合わせることができるが、何を言わないかは合わせずらい。
一度往訪してみた後、その上司のパーソナリティーを理解し、同じことを繰り返すのだろうと把握したところで、修正は困難である。
なぜ、それはしてはいけないことなのか、が理解できるのであれば、初めからやらないだろうと思われるからである。
押してもだめなら引いてみな、説明してもだめならぶん殴ってみな、という私が今作った標語はあるが、対応策は、ぶん殴る、つまり自分で痛い思いをして、気づいてもらうよりほかない。
自分で気づいてもらうための一番いい方法は、同じ目に遭ってもらうこと、である。
具体的には、自分の隠し持っておきたい経歴を披露してもらったのであれば、自分も上司の経歴を披露して差し上げればよい。
失敗した事案があれば、失敗したことを言ってはならないが、あの案件に関与していましたね、くらいは言って差し上げると余計に深く感じてもらえるのではないだろうか。
合コンでは結婚していることも、趣味が風俗であることも、決して話してはならない、と語らざるべき事柄を徹底する上司が、何故仕事ではそれができないのか、今後、謎の解明にいそしみたいと思うところである。