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東村山市中央公園周辺に住んでいると世界はこう見えています。偏見多めでしょうが。
出来事については断片的な記憶しかないが、この匂いだけはよく覚えている。
いや、日差しだって、暑さだって、空の青さだって、当時と何も変わっていない。
昨日のことのように鮮明に、でも何十年かぶりに思い出した。
 
他の子供たちが我先に駆け込んでいくのを見ながら、私と入り口を交互に見やる子供たち。
繋いだ手が、汗でぬれているせいもあって、心もとないが、大きくうなづいて手を離してあげる。
びっくりして、喜びを溢れさせ、走り出す子供たち。
 
数十年前の私も同じだった。
母が手を離し、一呼吸置いて走りだしたのだった。
弟と手を繋ぐよう、その手を離さないよう言われ、繋いだ手に力を込めた。
まだ幼かったせいもあるのだろう、足の遅い弟に少し苛ついた。
 
入り口の手前で弟が転び、母の声が聞こえると、私は弟が泣き出すのではないか、と緊張した。
あんなに泣き虫だった、弟がすぐに立ち上がり私を見た。そしてまた走り出した。
 
中は薄暗く、涼しかった。
私たちに慎重さのかけらはなく、ずんずん進んでいった。
進んでも進んでも、同じ茎が見えていたけれど、一本ずつ色が違って見えるのがきれいだった。
触ってみるとひんやりとしていたが、生きていることが実感された。普段触っている木や壁とは何かが違っていた。
 
分かれ道で分岐したときだ、彼に出会ったのは。
私と同じ位の歳に見えたその男の子は地面に腹ばっていた。踏んでしまって、ごめんなさい、と呟くと、
痛がるそぶりも見せずに、これを見て、と顔の先の茎の壁を指差した。
シャツと短パンが汚れて、お母さんに怒られないのかな、と思いながら頭の方に回り、覗き込んでみると壁の中に猫がいた。
茶色い、丸い目をした猫だった。
弟に見える場所を譲ると、弟は猫だ!と叫び、その声で猫は消えてしまった。
私は気まずい思いで彼を見やったが彼はうれしそうに立ち上がった。
そして、迷ってるの?一緒に出口を目指そうか?と言ったのだった。
迷路の中をさまよっている状態を迷っていると答えるべきか、一瞬悩んだものの、彼の優しい声をもっと聞いていたくて、一緒に歩くことを許した。
 
子供たちが迷路から戻ってくる時間、ゆっくりとあの日のことを、できる限り詳細に思い出そうとしてみた。
何もすることはなかったし、何をしたってあの日に戻ることはないのだから。
不意に、昨日の夜、ここに来ることを話したら、北海道に行けばもっと大きなひまわり畑があるみたいだよ、と夫が答える声が耳に甦った。
上昇志向の強い、あの夫らしい言葉だと改めて思う。
でも、私には、この時間が、この空気が、この思考が、例えようもないほど好きなのだ。
二人の子供たちが将来、この場所に来るのかどうかは分からない。こんな気持ちになるのかどうかも分からない。
でも、人生を立ち止まって振り返って元気になる、こんな時間を使えるようであったほしいと思う。
きっと、空は青いし、ひまわりは咲いているのだから。
 
西東京市 「ひまわりプロジェクト DE OIL 2012」
http://www.city.nishitokyo.lg.jp/enjoy/dekigoto/himawari_meiro_12.html
 
 
 
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